愛犬の体を支える「気・血・水」とは?
中医学薬膳を学ぶとき、必ず出てくる言葉が「気血水(きけつすい)」。これは、体を構成し、生命活動を支える三つの基本要素のことで、愛犬の体を支える三つの柱です。
気は、体を動かすエネルギー。血と水を巡らせ、体を温め、病気から守ります。
血は、全身に栄養と潤いを届ける赤い液体。被毛や皮膚を養い、精神も安定させます。
水は、血液以外の体液すべて。体を潤し、冷やし、関節を滑らかにします。
この三つは、それぞれ独立して働くのではなく、互いに影響し合っています。気が血と水を動かし、血が気を養い、水が体を潤す。このバランスが取れているとき、愛犬は健康で元気でいられるんです。
愛犬の症状を見るとき、「これは気の問題かな?血の問題かな?水の問題かな?」と考えてみてください。そうすれば、どんな食材を選べばいいか、どんなケアが必要か、自然と見えてきます。
中医学薬膳の第一歩は、この気血水を理解することから。難しく感じるかもしれませんが、愛犬をよく観察していれば、きっと分かるようになりますよ。
愛犬の心と体に優しい食事で、毎日をもっと元気に、もっと幸せに。
気(き)について
気とは何か
「気」は、目には見えないけれど、体を動かすエネルギーのこと。西洋医学でいう「代謝」や「免疫力」に近いイメージですね。気があるから、愛犬は元気に走り回れるし、病気と戦える。呼吸も消化も、すべて気の働きによるものなんです。
気には、いくつかの役割があります。
- 血や水を体中に巡らせる
- 体を温める
- 外からの病気を防ぐ
- 汗や尿など、体液が漏れ出すのを防ぐ
- 食べ物を栄養に変える
気が不足すると
気が不足する状態を「気虚(ききょ)」といいます。こんな症状が現れます。
- 疲れやすい、すぐ横になる
- 散歩に行きたがらない
- 食欲がない
- 声が小さい、弱々しい
- 息切れしやすい
- 風邪をひきやすい
気が滞ると
気の流れが悪くなる状態を「気滞(きたい)」といいます。
- イライラしやすい
- お腹が張る
- ゲップやため息が多い
- 食欲にムラがある
- 攻撃的になる
気は血や水を動かす原動力なので、気が整っていることがすべての基本なんです。
血(けつ)について
血とは何か
「血」は、全身に栄養と潤いを届ける赤い液体。西洋医学の血液とほぼ同じですが、中医学ではもう少し広い意味を持ちます。血は全身を巡って、筋肉や臓器、皮膚、被毛に栄養を届け、精神活動も支えているんです。
血の主な役割:
- 全身に栄養を届ける
- 体を潤す
- 心を落ち着ける
血は「気」によって全身に運ばれます。気が不足すると、血も滞りやすくなるんですね。
血が不足すると
血が不足する状態を「血虚(けっきょ)」といいます。
- 毛艶が悪い、パサパサする
- 皮膚が乾燥している
- 爪が割れやすい
- 目の輝きがない
- 貧血気味
- 怖がりになる、不安そうにする
- 落ち着きがない
血が滞ると
血の流れが悪くなる状態を「瘀血(おけつ)」といいます。
- 皮膚の色が暗い、黒っぽい
- 舌の色が紫がかっている
- 同じ場所を痛がる
- しこりやできものができやすい
- 老廃物が溜まりやすい
血は「気」と密接な関係にあります。気が血を動かし、血が気を養う。この相互関係が大切なんです。
水(すい)について
水とは何か
「水」は、血液以外の体液すべてを指します。中医学では「津液(しんえき)」とも呼ばれます。唾液、胃液、関節液、リンパ液、涙、汗など。体を潤し、冷やし、関節を滑らかにする役割があります。
水の主な役割:
- 皮膚や粘膜を潤す
- 体の熱を冷ます
- 関節や臓器の動きを滑らかにする
- 老廃物を運び出す
水は「気」によって全身に運ばれ、「血」と協力して体を潤します。
水が不足すると
水が不足する状態を「陰虚(いんきょ)」や「津液不足」といいます。
- 皮膚が乾燥している
- 鼻が乾いている
- 口が渇きやすい
- 便が硬い、コロコロしている
- 体が熱っぽい
- 落ち着きがない(特に夜)
水が滞ると
水の代謝が悪くなる状態を「水滞(すいたい)」や「痰湿(たんしつ)」といいます。
- むくみやすい
- 体が重だるい
- 軟便、下痢しやすい
- よだれが多い
- 湿疹ができやすい
- 太りやすい
水の代謝には「脾」と「肺」と「腎」という臓腑が深く関わっています。脾が食べた物を消化吸収しお水を肺に運ぶ、肺が必要な水と不要な水に分ける。腎が膀胱からオシッコとして出し、水をコントロールしするんです。
まとめ ー バランスを整えることが「養生」ー
「気」「血」「水」は、どれが一番大事ということではなく、それぞれが支え合いながら、体の調和を保っています。
気が血を動かし、血が体を養い、水がその流れをなめらかにする。
まるで3匹の仲良しわんこが、それぞれの役割を果たして助け合うような関係です。
薬膳の目的は、どれかを増やすことではなく、「全体のバランスを整えること」
愛犬が少し元気がない時、皮膚が乾いている時、むくんでいる時。
そのサインの奥にある「気・血・水」のゆらぎを見つめることで、無理のない自然なケアができるようになります。


