帰経
肝、脾
五性/五味
温/甘
   まぐろは愛犬の生命力を力強く育む滋養食材

お刺身でおなじみのまぐろ。実は中医学薬膳の世界では、愛犬の「気」「血」「陽」という3つの大切なエネルギーを同時に補える、とても優秀な食材なんです。体力を高め、血を増やし、体を温める。まぐろには、愛犬の生命力を根本から支える力が詰まっています。

まぐろは中医学で「温性」に分類される魚で、体を穏やかに温めてくれる性質を持っています。味わいは「甘味」で、肝と脾という2つの臓器に働きかけるんです。

気を補い、血を増やし、陽気を高める。この3つの効能が揃っているというのは、実はとても貴重なこと。体力が落ちている時、貧血気味の時、冷えが気になる時。まぐろは、こうした様々な不足を一度にサポートしてくれる力強い食材なんですね。

猫のイメージが強いかもしれませんが、犬にとっても優秀なたんぱく質源。加熱して与えることで、安全に栄養を届けることができますよ。

   帰経について

まぐろは肝と脾、この2つに働きかける食材なんです。

肝は血を蓄え、気の巡りを調整し、筋肉や目の働きを司る臓器です。肝が弱ると、疲れやすい、筋力が落ちる、目の調子が悪い、イライラするといった症状が現れます。

脾は消化吸収を担当する臓器で、食べたものを体のエネルギーに変える働きをしています。脾が弱ると、食欲不振、軟便、疲れやすさ、痩せといった症状が現れるんです。

まぐろはこの肝と脾の2つに集中的にアプローチして、血を蓄える力と、エネルギーを作り出す力の両方を高めてくれる。だからこそ、体力が落ちている愛犬や、貧血気味の子にとって、心強い味方になってくれるんです。

   五性について

まぐろは「温性」に属するんです。

温性の食材は、体を穏やかに温めてくれる働きがあります。熱性ほど強く温めないので、比較的使いやすい性質といえますね。

冷えやすい体質の愛犬、シニア期に入って体が冷えてきた子、寒い季節に体を温めたい時。まぐろの温性は、体の内側からじんわりと温めて、冷えによる不調をケアしてくれるんです。

ただし、体に熱がこもりやすい愛犬、皮膚が赤く炎症がある子、興奮しやすい子には、与えすぎに注意が必要。温性の食材は、冷えている体には良いけれど、熱がこもっている体にはさらに熱を加えてしまうからです。

愛犬の体質をよく観察して、冷えているタイプなら積極的に、熱っぽいタイプなら控えめに、という使い分けが大切ですね。

   五味について

まぐろは「甘味」を持つ食材なんです。

甘味は体を穏やかに補い、緊張を和らげる働きがあります。特に脾に作用して、消化吸収の力を高めてくれるんです。

甘味の食材は、エネルギー不足を補い、疲れた体を回復させ、痛みを和らげる性質も持っています。愛犬にとって受け入れやすく、体に優しい味わいといえますね。

まぐろの優しい甘味は、胃腸に負担をかけずに栄養を届けてくれる。しかも、魚の中でも消化吸収率が良いので、効率的に体のエネルギーに変換されるんです。

食が細くて体重が増えにくい愛犬や、病後の回復期、成長期の子犬、体力を高めたいシニア犬にとって、まぐろの甘味は体を優しく育ててくれる力になるでしょう。

   効能について

元気の源を補う
体のエネルギーである「気」を補う働きです。中医学では、気は生命活動すべての原動力と考えられているんです。

気が不足すると、疲れやすい、元気がない、声が小さい、動くのを嫌がる、息切れしやすい、食欲不振といった症状が現れます。愛犬がなんとなく元気がない、というのは、気不足のサインかもしれません。

まぐろは脾に働きかけて、食べたものから気を作り出す力を高めてくれる。さらに、まぐろ自体が気を補う性質を持っているので、二重の効果で愛犬の元気を底上げしてくれるんです。

運動量が多い活発な愛犬、老化で体力が落ちてきたシニア犬、病後で体力を回復させたい時、手術後のリハビリ期。こういった場面で、まぐろの補気作用は愛犬の生命力を力強くサポートしてくれるでしょう。

日常的に取り入れることで、疲れにくい体づくり、スタミナの向上が期待できます。まぐろは、愛犬の「元気の貯金」を増やしてくれる食材なんですね。

血を増やして体を養う
血を増やし、血の質を高める働きです。中医学でいう「血」は、現代医学の血液だけでなく、体を栄養し潤す物質全般を指すんです。

血が不足すると、顔色が悪い、被毛の艶がない、皮膚が乾燥する、爪が脆い、動悸がする、疲れやすい、目が疲れやすい、筋肉がつきにくいといった症状が現れます。

まぐろには鉄分が豊富に含まれていて、血を作る材料を直接補給できます。さらに、肝に蓄えられる血を増やし、脾の働きを高めることで、食べたものから血を作り出す力もサポートしてくれるんです。

貧血気味の愛犬、出産後の母犬、成長期の子犬、手術後の回復期、慢性的に体力が落ちている愛犬。こういった血が不足しがちな状況で、まぐろは体の内側から栄養を満たしてくれる食材といえるでしょう。

被毛の艶がなくなってきた、疲れやすくなった、というシニア犬にも、まぐろのこの作用は若々しさを保つ手助けをしてくれます。

陽気を高めて体を温める
体を温める力である「陽気」を補う働きです。中医学では、体の中には「陰」と「陽」という2つのエネルギーがあると考えます。陽は体を温め、動かす力なんです。

陽気が不足すると、冷え性、寒がり、四肢が冷たい、元気がない、動きが鈍い、尿が薄く量が多い、下痢しやすいといった症状が現れます。

まぐろの温性とこの作用は、体の内側から陽気を高めて、冷えを追い出してくれる。特に、腎の陽気を補う働きもあるので、根本的な体質改善にもつながるんです。

冷え性の愛犬、寒い季節に体が冷えやすい子、シニア期に入って陽気が弱ってきた愛犬、慢性的な下痢に悩む子。こういった陽気不足の症状がある愛犬に、まぐろは体を温めて元気を取り戻す手助けをしてくれるでしょう。

気・血・陽の3つを同時に補えるというのは、まぐろの大きな強み。体力づくり、冷え対策、貧血予防を一度にサポートできる、まさに滋養強壮の食材なんですね。

   薬膳とは別の角度から…

薬膳の視点だけでなく、栄養学的にもまぐろは優秀な食材なんです。

鮪(まぐろ)は、高たんぱく・低脂肪で、愛犬の筋肉づくりや体力維持に役立つ優れた魚です。部位によって脂質の量は異なりますが、特に赤身には鉄分やビタミンB群が豊富で、貧血予防や代謝促進に効果的です。DHAやEPAといった不飽和脂肪酸も多く、血液をサラサラに保ち、脳の健康にも良いとされています。さらに、抗酸化作用を持つセレンやビタミンEも含まれており、細胞の老化を防ぐ働きがあります。カリウムやリンといったミネラルも豊富で、体の水分バランスや骨の健康をサポートします。シュウ酸はほとんど含まれないため、腎臓への負担も少なく、安心して取り入れられる魚です。

主な栄養素(特徴)
 ・たんぱく質:筋肉・臓器の健康を保つ
 ・DHA・EPA:脳・神経を守り、血液循環を整える
 ・鉄・ビタミンB群:貧血予防・代謝促進
 ・カリウム・リン:水分バランスや骨の維持を助ける
 ・セレン・ビタミンE:抗酸化作用で細胞を守る
 ・シュウ酸:ほとんど含まれず腎への負担が少ない

大型魚なので水銀の蓄積が気になる場合は、頻度を控えめにしたり、他の魚とローテーションしたりすると良いでしょう。
加熱したまぐろは安全に与えられます。中医学の効能と栄養学の知見、両方の視点から見ても、まぐろは愛犬の健康を力強く支える理想的な食材といえるでしょう。
特に、体力が落ちている、冷えが気になる、貧血傾向がある愛犬には、まぐろの持つ3つの補う力が大きな助けになってくれます。日常の食事に少しずつ取り入れて、愛犬の元気を底上げしてあげてくださいね。

効能グループ

調理方法

1

煮る/蒸す/焼く(焼く場合は蒸し焼き推奨)

ポイント

まぐろは、書籍によっては、「平」という記載もあります。赤身は「平」脂身の多いトロとかは「温」と考える場合もあるようです。愛犬の様子を見て、注意してあげて下さい。

主な栄養素(分量 100 g あたり)

成分名
※ (まぐろ類) きはだ 生
カロリー
102kcal
タンパク質
24.3g
コレステロール
37mg
カリウム
450mg
リン
290mg