豚肉は愛犬の体を潤し養う滋養食材
身近な食材である豚肉。実は中医学薬膳の世界では、愛犬の体を深く潤し、陰を滋養してくれる貴重な食材なんです。陰を滋らし、腎を補い、乾燥を潤し、気を益し、血を養い、腫れを引かせる。豚肉には、愛犬の体を内側から潤して整える力が詰まっています。
豚肉は中医学で、陰を滋らし、腎を補い、乾燥を潤し、気を益し、血を養い、腫れを引かせる。この6つの効能の中でも、特に「体を潤す」という働きが際立っているのが豚肉の大きな特徴。鶏肉やラム肉が温める力を持つのに対し、豚肉は潤す力に優れているんですね。
体が乾燥しやすい愛犬、皮膚がカサカサする子、便が硬い子、体に熱がこもりやすい子。こういった愛犬にとって、豚肉は体の内側から潤いを届けてくれる頼もしい味方になります。
帰経について
豚肉は脾・胃・腎の3つに働きかける食材なんです。
脾は消化吸収を担当する臓器で、食べたものを体のエネルギーに変える働きをしています。脾が弱ると、食欲不振、軟便、疲れやすさ、痩せといった症状が現れます。
胃は食べ物を受け入れて消化する場所。脾と協力して、体を養う源を作り出しているんですね。胃の調子が悪いと、食欲が落ちたり、吐き気が出たりします。
腎は生命エネルギーの貯蔵庫であり、成長、生殖、老化に深く関わる重要な臓器です。腎が弱ると、足腰が弱い、排尿トラブル、老化が早まるといった症状が現れるんです。
豚肉はこの3つの臓器に同時にアプローチして、消化器系を整え、生命力の根本を支え、体全体を潤してくれる。守備範囲の広い食材といえるでしょう。
五性について
豚肉は「微寒性」に属するんです。
微寒性は寒性よりもさらに穏やかで、体をほんのり冷ます程度の性質。強く冷やしすぎないので、比較的使いやすい性質といえますね。
体に熱がこもりやすい愛犬、皮膚が赤く炎症がある子、口臭が強い子、便が硬い子には、豚肉の微寒性が体の余分な熱を優しく冷ましてくれます。
ただし、冷え性の愛犬や、お腹が冷えやすい子、下痢をしやすい子には注意が必要。そういった冷えているタイプには、鶏肉や羊肉など温性の肉の方が適しています。
愛犬の体質をよく観察して、熱っぽいタイプなら豚肉、冷えているタイプなら鶏肉、という使い分けが大切ですね。
五味について
豚肉は「甘鹹味」、つまり甘味と鹹味の両方を持つ食材なんです。
甘味は体を穏やかに補い、緊張を和らげる働きがあります。特に脾に作用して、消化吸収の力を高めてくれるんです。
鹹味(塩辛い味)は軟堅散結(硬いものを柔らかくし、固まりを散らす)作用があり、体を潤し、便を柔らかくする働きがあります。また、腎に作用する性質も持っているんです。
この2つの味わいが組み合わさることで、豚肉は体を補いながらも、潤し、固まりを散らす。バランスの取れた食材といえますね。
甘味で消化器を養い、鹹味で体を潤し腎を補う。だからこそ、豚肉は乾燥による不調や、腎虚の症状に優しく働きかけてくれるんです。
効能について
◾陰を滋らして体を潤す
体の潤いである「陰」を滋らし、増やす働きです。中医学では、体の中には「陰」と「陽」という2つのエネルギーがあると考えます。陰は体を潤し、冷やし、静める力なんです。
陰が不足すると、皮膚の乾燥、口の乾き、便秘、尿が濃い、体が熱っぽい、寝汗、不眠、被毛のパサつきといった症状が現れます。
豚肉の滋陰作用は、こうした陰虚(陰が不足した状態)を改善する手助けをしてくれる。体の内側から潤いを満たし、乾燥による不調を優しくケアしてくれるんです。
乾燥しやすい季節、皮膚がカサカサする愛犬、シニア期で体の潤いが減ってきた子に、豚肉は体を深く潤す滋養食材になってくれるでしょう。
◾腎を補って生命力を高める
腎の働きを補い強化することを指します。中医学でいう腎は、現代医学の腎臓だけでなく、老化全般に関わる機能を含んでいるんです。
腎の働きが弱ると、足腰の弱さ、排尿トラブル、耳が遠くなる、歯が脆い、被毛の艶がない、早期老化といった症状が現れます。
豚肉の補腎作用は、こうした腎虚(腎の働きが弱った状態)を改善する手助けをしてくれるんです。特に陰虚を伴う腎虚、つまり腎が弱って体も乾燥している状態に適しています。
加齢とともに腎の働きが衰えてくるシニア犬、足腰が弱ってきた愛犬に、豚肉は生命力を根本から支えてくれる食材といえるでしょう。
◾乾燥を潤す
乾燥を潤す働きです。「燥」は乾燥のこと。体が乾燥すると、様々な不調が現れるんです。
乾燥すると、皮膚のカサつき、被毛のパサつき、空咳、便秘、尿が少ない、口が渇くといった症状が現れます。
豚肉は良質な脂質を含んでいて、体の内側から潤いを与えてくれる。特に肺や大腸を潤すことで、呼吸器の乾燥や便秘を改善してくれるんです。
空気が乾燥する秋冬、暖房やエアコンで室内が乾燥している時、空咳が気になる愛犬、便が硬くなりがちな子に、豚肉は体を潤して乾燥から守る手助けをしてくれるでしょう。
◾元気の源を増やす
体のエネルギーである「気」を益し、増やす働きです。中医学では、気は生命活動すべての原動力と考えられているんです。
気が不足すると、疲れやすい、元気がない、動くのを嫌がる、息切れしやすい、食欲不振といった症状が現れます。
豚肉は脾に働きかけて、食べたものから気を作り出す力を高めてくれる。さらに、豚肉自体が気を補う性質も持っているので、体力が落ちている愛犬の元気を底上げしてくれるんです。
病後で体力を回復させたい時、シニア期で元気が落ちてきた愛犬、食が細くて体力がつきにくい子に、豚肉は気を益して活力を取り戻す手助けをしてくれるでしょう。
◾血を養って体を栄養する
血を養い、血の質を高める働きです。中医学でいう「血」は、体を栄養し潤す物質全般を指すんです。
血が不足すると、顔色が悪い、被毛の艶がない、皮膚が乾燥する、爪が脆い、目が疲れやすい、不眠といった症状が現れます。
豚肉には鉄分やビタミンB群が豊富に含まれていて、血を作る材料を補給できます。さらに、脾の働きを高めることで、食べたものから血を作り出す力もサポートしてくれるんです。
貧血気味の愛犬、被毛の艶がなくなってきた子、皮膚が乾燥しやすい子、出産後の母犬に、豚肉は血を養って体を内側から栄養してくれる食材といえるでしょう。
◾腫れを引かせる
炎症や腫れを鎮める働きです。体のどこかが腫れているということは、そこに熱や水分が溜まっている状態なんです。
豚肉の微寒性は余分な熱を冷まし、乾燥を潤す作用が水分の巡りを良くすることで、腫れを引かせる効果が生まれます。
軽い炎症、皮膚の腫れ、関節の腫れ、リンパ節の腫れといった症状に対して、豚肉は体の内側から穏やかにアプローチしてくれる食材といえるでしょう。
薬膳とは別の角度から…
薬膳の視点だけでなく、栄養学的にも豚肉は優秀な食材なんです。
良質なたんぱく質が豊富で、必須アミノ酸をバランス良く含んでいます。愛犬の筋肉、被毛、皮膚を作る大切な栄養素がしっかり摂れるんです。
ビタミンB群が非常に豊富で、特にビタミンB1(チアミン)は牛肉の約10倍も含まれています。エネルギー代謝を助け、疲労回復や神経の健康維持に役立つんです。
ナイアシン(ビタミンB3)も豊富で、皮膚の健康維持や、エネルギー代謝をサポートしてくれます。
ビタミンB6が含まれていて、たんぱく質の代謝を助け、免疫機能の維持に役立ちます。
ビタミンB12も豊富で、造血作用があり、貧血予防に効果的です。
鉄分が含まれていて、血を作る材料として大切な栄養素です。
亜鉛も含まれていて、免疫機能の維持、皮膚の健康、被毛の質に関わります。
セレンという抗酸化ミネラルも含まれていて、細胞を酸化ストレスから守ってくれます。
脂質も含まれていて、適度な量であれば体を潤す良質なエネルギー源になります。ただし、部位によって脂肪含有量が大きく異なるので、ヒレやもも肉など赤身を選ぶと低脂肪で与えやすいですよ。
豚肉は必ず十分に加熱して与えることが大切です。生や加熱不十分な豚肉には寄生虫のリスクがあるので、しっかり火を通してください。
中医学の効能と栄養学の知見、両方の視点から見ても、豚肉は愛犬の体を潤し養う理想的な食材といえるでしょう。
特に、体が乾燥しやすい愛犬、皮膚トラブルを抱える子、便秘がちな愛犬、シニア期の潤い不足には、豚肉の持つ滋陰潤燥の力が大きな助けになってくれます。赤身を選び、適量を守って、愛犬の体を内側から潤してあげてくださいね。









