帰経
脾、胃
五性/五味
平/甘
   牛肉は愛犬の生命力を力強く育む万能食材

ドッグフードの主原料としてもよく使われる牛肉。実は中医学薬膳の世界では、愛犬の「気」と「血」の両方を補える、とても優れた食材なんです。消化を助け、血を増やし、筋肉と骨を強くする。牛肉には、愛犬の生命力を根本から支える力が詰まっています。

   帰経について

牛肉は脾と胃、この2つに集中して働きかける食材なんです。
脾は消化吸収を担当する臓器で、食べたものを体のエネルギーに変える働きをしています。中医学では、生まれた後の生命活動を支える根本的な臓器なんです。脾が弱ると、食欲不振、軟便、疲れやすさ、痩せといった症状が現れます。
胃は食べ物を受け入れて消化する場所。脾と協力して、体を養う源を作り出しているんですね。胃の調子が悪いと、食欲が落ちたり、吐き気が出たり、胃もたれを感じたりします。
牛肉はこの脾胃のペアに集中的にアプローチして、消化器系全体の働きを高めてくれる。だからこそ、食が細い愛犬や、胃腸が弱めの子にとって、心強い味方になってくれるんです。

   五性について

牛肉は真ん中の「平性」に属するんです。
平性の食材は、体を温めも冷やしもしない、とても穏やかな性質。どんな体質の愛犬にも、どんな季節にも使いやすい、まさに万能選手なんですね。
冷え性の愛犬にも、熱っぽい愛犬にも、どちらにも負担なく与えられます。夏でも冬でも、季節を気にせず活用できる。薬膳を始めたばかりの方が、食材選びで迷った時に「とりあえず平性」を選ぶのは、とても理にかなった判断といえるでしょう。
牛肉はこの平性という性質のおかげで、毎日の食事に取り入れやすい食材。体質や季節に神経質にならなくていいので、薬膳初心者さんにとって本当に使いやすいんです。

   五味について

牛肉は「甘味」を持つ食材なんです。
甘味は体を穏やかに補い、緊張を和らげる働きがあります。五臓の中でも特に脾に作用して、消化吸収の力を高めてくれるんです。
甘味の食材は、エネルギー不足を補い、疲れた体を回復させ、痛みを和らげる性質も持っています。愛犬にとって受け入れやすく、体に優しい味わいといえますね。
牛肉の甘味は、胃腸に負担をかけずに栄養を届けてくれる。しかも、肉類の中でも消化吸収率が良いので、効率的に体のエネルギーに変換されるんです。
食が細くて体重が増えにくい愛犬や、病後の回復期、成長期の子犬にとって、牛肉の甘味は体を優しく育ててくれる力になるでしょう。

   効能について

元気の源を補う
体のエネルギーである「気」を補う働きです。中医学では、気は生命活動すべての原動力と考えられているんです。
気が不足すると、疲れやすい、元気がない、声が小さい、動くのを嫌がる、息切れしやすい、といった症状が現れます。愛犬がなんとなく元気がない、というのは、気不足のサインかもしれません。
牛肉は脾胃に働きかけて、食べたものから気を作り出す力を高めてくれる。さらに、牛肉自体が気を補う性質を持っているので、二重の効果で愛犬の元気を底上げしてくれるんです。
運動量が多い活発な愛犬、老化で体力が落ちてきたシニア犬、病後で体力を回復させたい時。こういった場面で、牛肉の補気作用は愛犬の生命力を力強くサポートしてくれるでしょう。

血を増やして体を養う
血を増やし、血の質を高める働きです。中医学でいう「血」は、現代医学の血液だけでなく、体を栄養し潤す物質全般を指すんです。
血が不足すると、顔色が悪い、被毛の艶がない、皮膚が乾燥する、爪が脆い、動悸がする、疲れやすい、といった症状が現れます。特に、貧血気味の愛犬には注意が必要なサインですね。
脾胃の働きを高めることで、食べたものから血を作り出す力もサポートしてくれるんです。
出産後の母犬、成長期の子犬、手術後の回復期、慢性的に体力が落ちている愛犬。こういった血が不足しがちな状況で、牛肉は体の内側から栄養を満たしてくれる食材といえるでしょう。

消化の力を高める
脾の働きを健やかに保つことを意味します。脾は食べたものを消化吸収して、気と血に変える、体のエネルギー工場なんです。
脾の働きが弱ると、どんなに良い食事を与えても、しっかり栄養として吸収できません。食欲不振、軟便、下痢、お腹が張る、疲れやすさ、痩せといった症状が現れます。
牛肉の甘味と平性は、脾を穏やかに補い、その働きを助けてくれる。消化吸収の力が高まれば、食べたものがしっかり体の栄養になる。結果として、愛犬の体力や免疫力の底上げにつながるんです。
胃腸が弱くて下痢をしやすい愛犬、食が細くてなかなか体重が増えない子、シニア期に入って消化力が落ちてきた子。こういった愛犬に、牛肉は消化器系を根本から支えてくれる食材なんですね。

胃の働きを助ける
胃の働きを益し、強化することを指します。胃は食べ物を受け入れて消化する、消化器系の入り口なんです。
胃の働きが弱ると、食欲不振、胃もたれ、吐き気、嘔吐、胃の不快感といった症状が現れます。愛犬が食事を残すようになったり、食べた後にすぐ吐いてしまったりするのは、胃の働きが弱っているサインかもしれません。
牛肉は胃に直接働きかけて、その消化機能を高めてくれる。胃の粘膜を養い、胃液の分泌を適切に保ち、食べ物をスムーズに消化できるようサポートするんです。
ストレスで食欲が落ちやすい愛犬、胃が弱くて吐きやすい子、食べムラがある子。こういった胃のトラブルを抱える愛犬にとって、牛肉は胃を優しく育ててくれる頼もしい食材といえるでしょう。

筋肉と骨を強くする
筋肉と骨を強化する働きです。中医学では、筋肉は肝に、骨は腎に支配されていると考えますが、その両方を養うには、気と血が充実していることが前提なんです。
筋骨が弱ると、足腰の力が弱い、関節が不安定、骨が脆い、筋肉量が少ない、運動能力が低い、といった症状が現れます。
牛肉は気と血の両方を補うことで、筋肉を作る材料と、骨を強くする栄養を同時に届けてくれる。さらに、良質なたんぱく質が豊富なので、筋肉の合成を直接サポートできるんです。
成長期の子犬、スポーツドッグとして活躍する愛犬、シニア期に入って筋肉量が落ちてきた子、骨折後のリハビリ期。こういった場面で、牛肉は筋骨を力強く育ててくれる食材になるでしょう。

   薬膳とは別の角度から…

薬膳の視点だけでなく、栄養学的にも牛肉は優秀な食材なんです。
良質なたんぱく質が豊富で、必須アミノ酸をバランス良く含んでいます。愛犬の筋肉、被毛、皮膚、内臓を作る大切な栄養素がしっかり摂れるんです。しかも、消化吸収率が高いので、効率的に体の材料になってくれます。
鉄分が豊富で、特に赤身肉に多く含まれています。ヘム鉄という吸収されやすい形で存在するので、貧血予防に効果的。血を作り、全身に酸素を運ぶ大切な栄養素です。
ビタミンB群が豊富に含まれています。ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシンなどが含まれていて、エネルギー代謝を助けてくれるんです。疲労回復、神経の健康維持、皮膚や被毛の健康にも役立ちます。
亜鉛も含まれていて、免疫機能の維持、皮膚の健康、被毛の質、味覚や嗅覚の維持に関わります。成長期の子犬や、皮膚トラブルを抱える愛犬にとって大切なミネラルなんです。
セレンという抗酸化ミネラルも含まれています。細胞を酸化ストレスから守り、免疫機能をサポートしてくれる栄養素です。
クレアチンが豊富で、筋肉のエネルギー源として働きます。運動能力の向上や、筋肉の維持に役立つ成分なんです。
牛肉は、部位によって脂肪含有量が変わります。赤身を選べば低脂肪で高たんぱく質。胃腸が弱い愛犬や、ダイエット中の子にも使いやすいんですね。
加熱した牛肉は消化に優しく、安全に与えられます。中医学の効能と栄養学の知見、両方の視点から見ても、牛肉は愛犬の健康を力強く支える理想的な食材といえるでしょう。

効能グループ

調理方法

1

煮る/蒸す/焼く(焼く場合は蒸し焼き推奨)

ポイント

牛肉は、気と血の両方を補う食材で、特に、冬に適しています。また、脂身の少ない部位を利用する事をおススメします。

また、牛肉は部位で異なる帰経・五性/五味・効能となります。※会員様限定ページにて公開しています。

主な栄養素(分量 100 g あたり)

成分名
※うし [和牛肉] ヒレ 赤肉 生
 
カロリー
207kcal
タンパク質
19.1g
脂質
15.0g
カリウム
340mg
リン
180mg