蓮根は調理法で性質が変わる不思議な薬膳食材
シャキシャキとした食感が特徴的な蓮根。実は中医学薬膳の世界では、調理法によって性質と効能が大きく変わる、とても興味深い食材なんです。生のままでは体の熱を冷まし、加熱すると消化器系を温める。一つの食材で、こんなにも異なる働きを使い分けられるなんて驚きですよね。
蓮根は、生の状態と加熱した状態で、まったく異なる性質を持つ珍しい食材です。
蓮根(生)は「寒性」に分類され、体の余分な熱を冷ます働きがあります。体に熱がこもっている時や、乾燥が気になる時に力を発揮してくれるんです。
蓮根(加熱)は「平性」に分類され、体を温めも冷やしもしない穏やかな性質に変わります。消化器系を整え、体を内側から支える働きが中心になるんですね。
同じ蓮根でも、調理法を変えるだけで、こんなにも違う効果が得られる。これが薬膳の面白さであり、奥深さなんです。
帰経について
蓮根は心・肺・脾・胃の4つに働きかける、守備範囲の広い食材なんです。
心は精神活動や血液循環を司る臓器。心に働きかけることで、イライラを鎮めたり、精神を安定させたりする効果が期待できます。
肺は呼吸だけでなく、皮膚や被毛の健康、水分代謝も司っています。肺を潤すことで、乾燥による咳や皮膚のカサつきをケアしてくれるんです。
脾は消化吸収を担当する臓器で、食べたものを体のエネルギーに変える働きをしています。脾の働きを助けることで、消化力を高めてくれます。
胃は食べ物を受け入れて消化する場所。脾と協力して、体を養う源を作り出しているんですね。
蓮根はこの4つの臓器に同時にアプローチして、愛犬の体を多角的に支えてくれる食材といえるでしょう。
五性について
蓮根の最大の特徴は、調理法によってこの五性が変わることなんです。
蓮根(生)の場合:寒性
生の蓮根は「寒性」に分類されます。寒性の食材は、体にこもった強い熱を冷ます働きがあるんです。
体に熱がこもると、興奮しやすい、目が赤い、皮膚が熱い、便が硬い、尿が濃いといった症状が現れます。生の蓮根は、こうした熱の症状を鎮めてくれる力を持っています。
ただし、寒性は体を冷やす力が強いので、冷え性の愛犬や、お腹を壊しやすい子には注意が必要。犬に与える場合は、基本的に加熱をおすすめします。
蓮根(加熱)の場合:平性
加熱した蓮根は「平性」に変わります。平性は体を温めも冷やしもしない、中庸な性質なんです。
どんな体質の愛犬にも、どんな季節にも使いやすい。これが平性の大きな魅力ですね。加熱することで、寒性の冷やす力が和らぎ、消化にも優しくなります。
薬膳初心者の方が蓮根を使う時は、まず加熱から始めるのがおすすめ。安心して毎日の食事に取り入れられますよ。
五味について
蓮根は生でも加熱でも「甘味」を持つ食材なんです。
甘味は体を穏やかに補い、緊張を和らげる働きがあります。特に脾に作用して、消化吸収の力を高めてくれるんです。
甘味の食材は、エネルギー不足を補い、疲れた体を回復させ、痛みを和らげる性質も持っています。愛犬にとって受け入れやすく、体に優しい味わいといえますね。
蓮根の優しい甘味は、胃腸に負担をかけずに栄養を届けてくれる。生でも加熱でも、この甘味の性質は変わりません。
効能について
体にこもった余分な熱を冷ます働きです。生の蓮根は寒性なので、この清熱作用が特に強いんです。
体に熱がこもると、興奮しやすい、目が赤い、皮膚が熱を持つ、口臭が強い、便が硬い、尿が濃いといった症状が現れます。
生の蓮根のこの作用は、こうした熱の症状を鎮めてくれる。体に熱がこもりやすい愛犬には、加熱した蓮根でも十分に清熱のサポートができますよ。
肺を潤して乾燥から守る働きです。肺は呼吸器だけでなく、皮膚や被毛の健康にも関わる臓器なんです。
肺が乾燥すると、空咳、皮膚のカサつき、被毛の艶のなさ、鼻の乾燥といった症状が現れます。
生の蓮根は水分を豊富に含み、肺を優しく潤してくれる。加熱した蓮根でも、この潤す力は残っています。乾燥しやすい季節や、空咳が気になる愛犬に、蓮根は肺の潤いを保つ手助けをしてくれるでしょう。
体の中で滞った血を流す働きです。中医学でいう「瘀血(おけつ)」は、血の巡りが悪くなって一か所に溜まった状態を指すんです。
瘀血があると、痛み、腫れ、皮膚の色素沈着、舌が紫っぽくなる、といった症状が現れます。
生の蓮根は、この滞った血を流して、血の巡りを改善してくれる。慢性的な痛みや腫れを抱える愛犬にとって、蓮根は血の流れを整える手助けをしてくれる食材なんです。
加熱することで作用は穏やかになりますが、日常的に取り入れることで、血の巡りをサポートできますよ。
体の潤いである「津液(しんえき)」を生み出す働きです。津液は体を潤し、栄養を運び、体温を調整する大切な体液なんです。
津液が不足すると、口の乾き、喉の渇き、皮膚の乾燥、便秘、尿が少ないといった症状が現れます。
蓮根は水分を豊富に含み、体の中で津液を生み出す手助けをしてくれる。加熱しても、この生津の力は残っています。乾燥しやすい愛犬や、水分不足が気になる子に、蓮根は体の潤いを保つサポートをしてくれるでしょう。
イライラや落ち着きのなさを鎮める働きです。体に熱がこもると、精神的にも不安定になりやすいんです。
興奮しやすい、そわそわする、夜に落ち着かない、といった症状が「煩」の状態。生の蓮根は心に働きかけて、こうした精神の熱を冷ましてくれるんです。
ストレスを感じやすい愛犬や、環境の変化で興奮しやすい子に、蓮根は心の安定をもたらす優しいサポート役になってくれるでしょう。
脾の働きを健やかに保つことを意味します。加熱した蓮根は、この作用が特に強くなるんです。
脾の働きが弱ると、食欲不振、軟便、下痢、疲れやすさ、痩せといった症状が現れます。
加熱した蓮根の甘味と平性は、脾を穏やかに補い、その働きを助けてくれる。消化吸収の力が高まれば、食べたものがしっかり体の栄養になる。胃腸が弱めの愛犬に、加熱した蓮根は心強い味方になってくれるでしょう。
胃の働きを開いて、食欲を高める作用です。加熱した蓮根は、胃を優しく刺激して、食欲を引き出してくれるんです。
食欲不振、食べムラ、食事への興味が薄い、といった症状がある愛犬に、加熱した蓮根は胃を目覚めさせる手助けをしてくれます。
シニア期に入って食が細くなった子や、季節の変わり目に食欲が落ちやすい子に、蓮根は食べる喜びを取り戻すサポートをしてくれるでしょう。
下痢を止める働きです。加熱した蓮根は、腸の働きを整えて、軟便や下痢を改善してくれるんです。
脾胃が弱くて下痢をしやすい愛犬、ストレスで便が緩くなりやすい子に、加熱した蓮根は腸を優しく引き締めてくれます。
蓮根のでんぷん質と食物繊維が、適度に腸を整える。お腹のトラブルを抱える愛犬にとって、頼りになる食材といえるでしょう。
体から精が漏れ出るのを防ぐ働きです。精は生命エネルギーの源で、腎に蓄えられているんです。
精が固まらないと、尿漏れ、頻尿、生殖機能の低下といった症状が現れます。
加熱した蓮根は、腎の精をしっかり保持する力を高めてくれる。シニア期に入って尿のトラブルが増えてきた愛犬に、蓮根は体の根本を支える食材になってくれるでしょう。
五臓(肝・心・脾・肺・腎)すべてを補う働きです。加熱した蓮根は、特定の臓器だけでなく、体全体を優しく養ってくれるんです。
蓮根は心・肺・脾・胃に帰経しますが、その働きが五臓全体に波及する。体のバランスを整え、全身の健康を底上げしてくれる食材といえますね。
日常的に取り入れることで、愛犬の体を総合的にサポートできる。これが蓮根の大きな魅力なんです。
薬膳とは別の角度から…
薬膳の視点だけでなく、栄養学的にも蓮根は優秀な食材なんです。
ビタミンCが豊富で、加熱しても比較的残りやすいのが特徴。抗酸化作用があり、免疫力をサポートしてくれます。
食物繊維が豊富で、腸内環境を整え、お通じをスムーズにしてくれます。
カリウムが含まれていて、体内の余分な塩分を排出し、むくみの予防にも役立ちます。
ビタミンB群も含まれていて、エネルギー代謝を助けてくれるんです。
ポリフェノールが含まれていて、抗酸化作用が期待できます。ただし、犬に与える場合はアク抜きをして、適量を守ることが大切です。
蓮根はでんぷん質を含むので、適度なエネルギー源にもなります。加熱することで消化に優しくなり、安全に与えられる。中医学の効能と栄養学の知見、両方の視点から見ても、蓮根は愛犬の健康を多角的に支える理想的な食材といえるでしょう。











