帰経
脾、胃、大腸
五性/五味
平/甘酸
   りんごは愛犬の体を優しく潤し整える万能フルーツ

「一日一個のりんごは医者を遠ざける」という言葉があるように、りんごは古くから健康に良い果物として親しまれてきました。実は中医学薬膳の世界でも、りんごは愛犬の体を潤し、消化を助け、様々な不調を優しくケアしてくれる優秀な食材なんです。体液を生み出し、肺を潤し、胃を助け、消化を促し、脾を健やかに保ち、お酒の酔いまで覚ます効能を持つフルーツです。

   帰経について

りんごは脾・胃・大腸の3つに働きかける、消化器系に特化した食材なんです。
脾は消化吸収を担当する臓器で、食べたものを体のエネルギーに変える働きをしています。脾が弱ると、食欲不振、軟便、疲れやすさ、痩せといった症状が現れます。
胃は食べ物を受け入れて消化する場所。脾と協力して、体を養う源を作り出しているんですね。胃の調子が悪いと、食欲が落ちたり、吐き気が出たり、胃もたれを感じたりします。
大腸は不要なものを排出し、水分を吸収する臓器です。大腸の働きが乱れると、便秘や下痢といったお通じのトラブルが起こります。

りんごはこの消化器系の3つの臓器に集中的にアプローチして、食べる・消化する・吸収する・排出するという一連の流れをスムーズにサポートしてくれるんです。

   五性について

りんごは真ん中の「平性」に属するんです。
平性の食材は、体を温めも冷やしもしない、とても穏やかな性質。どんな体質の愛犬にも、どんな季節にも使いやすい、まさに万能選手なんですね。
冷え性の愛犬にも、熱っぽい愛犬にも、どちらにも負担なく与えられます。夏でも冬でも、季節を気にせず活用できる。これがりんごの大きな魅力の一つです。
薬膳を始めたばかりの方が、食材選びで迷った時に「平性」を選ぶのは、とても理にかなった判断。りんごはその代表格といえるでしょう。
体質や季節に神経質にならなくていいので、毎日のおやつや食事のトッピングに気軽に取り入れられますよ。

   五味について

りんごは「甘酸味」、つまり甘味と酸味の両方を持つ食材なんです。
甘味は体を穏やかに補い、緊張を和らげる働きがあります。特に脾に作用して、消化吸収の力を高めてくれるんです。エネルギー不足を補い、疲れた体を回復させる性質も持っています。
酸味は引き締める作用があり、体から大切なものが漏れ出るのを防ぎます。汗や尿、便などをコントロールし、適度に留める力があるんです。また、酸味は肝に働きかけて、気の巡りを調整する働きもあります。
この2つの味わいが組み合わさることで、りんごは体を補いながらも、引き締める。バランスの取れた食材といえますね。
甘味で消化器を養い、酸味で体液を留める。だからこそ、りんごは下痢をしやすい愛犬にも、脱水気味の愛犬にも優しく働きかけてくれるんです。

   効能について

体液を生み出す
体の潤いである「津液(しんえき)」を生み出す働きです。津液は体を潤し、栄養を運び、体温を調整する大切な体液なんです。
津液が不足すると、口の乾き、喉の渇き、皮膚の乾燥、便秘、尿が少ない、鼻が乾くといった症状が現れます。特に夏場の暑い時期や、運動後、発熱時には津液が失われやすくなるんですね。
りんごは水分を豊富に含み、体の中で津液を生み出す手助けをしてくれる。ただ水を飲むだけでは補えない、体に馴染む潤いを作り出してくれるんです。
乾燥しやすい季節、暑い日の水分補給、シニア期で体の潤いが減ってきた愛犬に、りんごは体の内側から潤いを届けてくれる食材といえるでしょう。

肺を潤す
肺を潤して乾燥から守る働きです。肺は呼吸器だけでなく、皮膚や被毛の健康、水分代謝にも関わる大切な臓器なんです。
肺が乾燥すると、空咳、痰が出にくい、喉のイガイガ、皮膚のカサつき、被毛の艶のなさ、鼻の乾燥といった症状が現れます。
りんごは肺に潤いを与えて、乾燥による不調を優しくケアしてくれる。特に空気が乾燥する秋冬や、暖房やエアコンで室内が乾燥している時に、りんごの潤肺作用は力を発揮するんです。
空咳が気になる愛犬、皮膚が乾燥しやすい子、被毛がパサつきがちな子に、りんごは肺の潤いを保つ手助けをしてくれるでしょう。

胃の働きを助ける
胃の働きを益し、強化することを指します。胃は食べ物を受け入れて消化する、消化器系の入り口なんです。
胃の働きが弱ると、食欲不振、胃もたれ、吐き気、嘔吐、胃の不快感といった症状が現れます。愛犬が食事を残すようになったり、食べた後にすぐ吐いてしまったりするのは、胃の働きが弱っているサインかもしれません。
りんごは胃に直接働きかけて、その消化機能を高めてくれる。胃の粘膜を優しく守り、胃液の分泌を適切に保ち、食べ物をスムーズに消化できるようサポートするんです。
ストレスで食欲が落ちやすい愛犬、胃が弱くて吐きやすい子、食べムラがある子に、りんごは胃を優しく育ててくれる頼もしい食材といえるでしょう。

消化を促進する
食べたものの消化を促進し、胃腸の停滞を解消する働きです。食べ過ぎや消化不良で、胃腸に食べ物が溜まってしまった状態を改善してくれるんです。
食べたものが胃腸に停滞すると、お腹の張り、胃もたれ、食欲不振、げっぷ、吐き気、便秘といった症状が現れます。
りんごに含まれる酸味と食物繊維は、消化を助け、腸の動きを促してくれる。食べ過ぎた後や、消化に時間がかかる食事の後に、りんごは胃腸の働きをスムーズにする手助けをしてくれるんです。
お腹が張りやすい愛犬、食べ過ぎが心配な時、消化不良を起こしやすい子に、りんごは胃腸の負担を軽くしてくれる食材といえますね。

消化の力を高める
脾の働きを健やかに保つことを意味します。脾は食べたものを消化吸収して、気血に変える、体のエネルギー工場なんです。
脾の働きが弱ると、どんなに良い食事を与えても、しっかり栄養として吸収できません。食欲不振、軟便、下痢、疲れやすさ、痩せ、毛艶の悪さといった症状が現れます。
りんごの甘味と平性は、脾を穏やかに補い、その働きを助けてくれる。消化吸収の力が高まれば、食べたものがしっかり体の栄養になる。結果として、愛犬の体力や免疫力の底上げにつながるんです。
胃腸が弱くて下痢をしやすい愛犬、食が細くてなかなか体重が増えない子、シニア期に入って消化力が落ちてきた子に、りんごは消化器系を根本から支えてくれる食材なんですね。

酔いを覚ます
お酒の酔いを覚まし、アルコールを解毒する働きです。犬にはお酒を与えることはありませんが、この効能は「体内の毒素を解毒する力」として理解できるんです。
中医学では、体に入った有害物質や、体内で生じた老廃物を「毒」と考えます。りんごのこの作用は、こうした毒素を分解し、排出する手助けをしてくれる働きなんですね。
りんごに含まれる成分が、肝臓の解毒機能をサポートし、体の中をきれいに保つ。これは、現代でいうデトックス効果に近い働きといえるでしょう。
体に負担がかかった時、薬を飲んでいる時、肝臓をいたわりたい時に、りんごは体の解毒を優しく助けてくれる食材なんです。

   薬膳とは別の角度から…

薬膳の視点だけでなく、栄養学的にもりんごは優秀な食材なんです。
食物繊維が豊富で、特にペクチンという水溶性食物繊維が含まれています。ペクチンは腸内環境を整え、善玉菌を増やし、お通じをスムーズにしてくれる。また、余分なコレステロールを排出する働きもあるんです。
カリウムが含まれていて、体内の余分な塩分を排出し、むくみの予防に役立ちます。血圧の調整にも関わる大切なミネラルです。
ビタミンCが含まれていて、抗酸化作用があり、免疫力をサポートしてくれます。皮膚や被毛の健康維持にも役立つんです。
ポリフェノールが豊富で、特に皮の部分に多く含まれています。抗酸化作用が強く、細胞を酸化ストレスから守ってくれる。老化予防にも期待できますね。
リンゴ酸やクエン酸などの有機酸が含まれていて、疲労回復や食欲増進に役立ちます。
りんごは低カロリーで、おやつとして与えやすい果物。ただし、糖質を含むので、与えすぎには注意が必要です。種と芯は取り除き、小さくカットして与えてください。
中医学の効能と栄養学の知見、両方の視点から見ても、りんごは愛犬の健康を優しく支える理想的な食材といえるでしょう。毎日の食事に少しずつ取り入れて、愛犬の体を内側から潤し、整えてあげてくださいね。

効能グループ

調理方法

1

生/煮る/蒸す/焼く(焼く場合は蒸し焼き推奨)

ポイント

生であげる場合は、冷えた状態であげるのではなく、常温の状態であげるのをおススメします。

主な栄養素(分量 100 g あたり)

成分名
※りんご 皮なし 生
 
カロリー
53kcal
炭水化物
15.5g
カリウム
120mg
リン
12mg