鶏肉は愛犬の体を芯から温めて元気を育む万能食材
ドッグフードの主原料としてもよく使われる鶏肉。実は中医学薬膳の世界では、愛犬の体を芯から温め、気を補い、生命力を根本から高めてくれる優秀な食材なんです。お腹を温め、エネルギーを補い、生命の精を増やし、骨髄まで満たす。鶏肉には、愛犬の体を深いところから支える力が詰まっています。
鶏肉は中医学で「温性」に分類される肉で、体を穏やかに温めてくれる性質を持っています。味は「甘味」で、脾と肝という2つの臓器に働きかけるんです。
お腹を温めて消化力を高め、気というエネルギーを補い、生命の源である精を増やし、骨髄まで満たす。こんなにも深く体を養ってくれる食材は、そう多くありません。
牛肉や豚肉と比べて消化に優しく、それでいて体を補う力は十分。だからこそ、体力が落ちている愛犬や、シニア犬、病後の回復期にも使いやすい食材なんですね。
帰経について
鶏肉は脾と肝、この2つに働きかける食材なんです。
脾は消化吸収を担当する臓器で、食べたものを体のエネルギーに変える働きをしています。中医学では、生まれた後の生命活動を支える根本的な臓器なんです。脾が弱ると、食欲不振、軟便、疲れやすさ、痩せといった症状が現れます。
肝は血を蓄え、気の巡りを調整し、筋肉や目の働きを司る臓器です。肝が弱ると、疲れやすい、筋力が落ちる、目の調子が悪い、イライラするといった症状が現れます。
鶏肉はこの脾と肝の2つに集中的にアプローチして、消化器系を温めて強化し、血を蓄える力を高めてくれる。だからこそ、体の基礎を固めたい時に、心強い味方になってくれるんです。
五性について
鶏肉は「温性」に属するんです。
温性の食材は、体を穏やかに温めてくれる働きがあります。熱性ほど強く温めないので、比較的使いやすい性質といえますね。
冷えやすい体質の愛犬、シニア期に入って体が冷えてきた子、寒い季節に体を温めたい時。鶏肉の温性は、体の内側からじんわりと温めて、冷えによる不調をケアしてくれるんです。
特に、お腹が冷えやすい愛犬、下痢をしやすい子、元気がなくて体が冷たい子には、鶏肉の温める力が体を芯から支えてくれます。
ただし、体に熱がこもりやすい愛犬、皮膚が赤く炎症がある子、興奮しやすい子には、与えすぎに注意が必要。温性の食材は、冷えている体には良いけれど、熱がこもっている体にはさらに熱を加えてしまうからです。
愛犬の体質をよく観察して、冷えているタイプなら積極的に、熱っぽいタイプなら控えめに、という使い分けが大切ですね。
五味について
鶏肉は「甘味」を持つ食材なんです。
甘味は体を穏やかに補い、緊張を和らげる働きがあります。特に脾に作用して、消化吸収の力を高めてくれるんです。
甘味の食材は、エネルギー不足を補い、疲れた体を回復させ、痛みを和らげる性質も持っています。愛犬にとって受け入れやすく、体に優しい味わいといえますね。
鶏肉の優しい甘味は、胃腸に負担をかけずに栄養を届けてくれる。しかも、消化吸収率が高いので、効率的に体のエネルギーに変換されるんです。
食が細くて体重が増えにくい愛犬や、病後の回復期、成長期の子犬、体力を高めたいシニア犬にとって、鶏肉の甘味は体を優しく育ててくれる力になるでしょう。
効能について
体の中心、つまりお腹を温める働きです。中医学では、お腹は脾胃が位置する大切な場所。ここが冷えると、消化力が落ちて、様々な不調が現れるんです。
お腹が冷えると、食欲不振、下痢、軟便、お腹の冷え、元気がない、疲れやすいといった症状が現れます。特に、触ってみてお腹が冷たい愛犬は、温中が必要なサインです。
鶏肉の温性は、お腹を芯から温めて、脾胃の働きを高めてくれる。消化力が上がれば、食べたものがしっかり栄養になり、気血が作られるようになるんです。
お腹が弱い愛犬、冷えるとすぐ下痢をする子、寒い季節に食欲が落ちる子、シニア期で消化力が落ちてきた愛犬。こういった場面で、鶏肉の温中作用は消化器系を根本から支えてくれる力になるでしょう。
日常的に取り入れることで、お腹の冷えを予防し、丈夫な消化器を育てることができます。
体のエネルギーである「気」を益し、増やす働きです。中医学では、気は生命活動すべての原動力と考えられているんです。
気が不足すると、疲れやすい、元気がない、声が小さい、動くのを嫌がる、息切れしやすい、食欲不振、免疫力が落ちるといった症状が現れます。
鶏肉は脾に働きかけて、食べたものから気を作り出す力を高めてくれる。さらに、鶏肉自体が気を補う性質を持っているので、二重の効果で愛犬の元気を底上げしてくれるんです。
運動量が多い活発な愛犬、老化で体力が落ちてきたシニア犬、病後で体力を回復させたい時、手術後のリハビリ期、免疫力を高めたい時。こういった場面で、鶏肉の益気作用は愛犬の生命力を力強くサポートしてくれるでしょう。
日常的に取り入れることで、疲れにくい体づくり、スタミナの向上、免疫力の維持が期待できます。
生命の根本となるエネルギーである「精」を益し、増やす働きです。精は腎に蓄えられていて、成長、生殖、老化のスピードを左右する大切なものなんです。
精が不足すると、成長が遅れる、生殖機能が衰える、老化が早まる、足腰が弱い、歯が脆い、被毛の艶がない、耳が遠くなるといった症状が現れます。
鶏肉は、この大切な精を増やしてくれる食材。特に成長期の子犬、繁殖を考えている愛犬、シニア期の老化予防に心強い味方になってくれます。
精を増やすことは、愛犬の生命力そのものを底上げすること。単なる栄養補給ではなく、体の根本から強くしてくれるんです。
長期的な健康維持、若々しさを保つ、足腰の強さを保つ。こういった目標に向けて、鶏肉は日々の食事から愛犬の精を育ててくれる食材といえるでしょう。
中医学では、髄は精から作られ、骨を養い、脳につながっていると考えられているんです。
髄が不足すると、骨が脆い、足腰が弱い、脳の働きが衰える、記憶力が落ちる、耳が遠くなる、歯が弱いといった症状が現れます。
鶏肉のこの作用は、骨の内側から体を強くしてくれる深い働き。単に表面的な栄養を与えるのではなく、体の芯、骨の中まで栄養を届けてくれるんです。
成長期の子犬の骨の発育、スポーツドッグの骨の強化、シニア期の骨の衰え予防、骨折後のリハビリ期。こういった場面で、鶏肉は骨を内側から強くする手助けをしてくれます。
また、脳も髄の一部と考えられているので、認知機能の維持にも期待できる。シニア犬の脳の健康を守るためにも、鶏肉は優れた食材といえるでしょう。
薬膳とは別の角度から…
薬膳の視点だけでなく、栄養学的にも鶏肉は優秀な食材なんです。
鶏肉は、高たんぱくで低脂肪な食材として知られ、愛犬の体づくりにも欠かせない優れた動物性たんぱく源です。消化吸収がよく、筋肉や臓器の健康維持、免疫力アップに役立ちます。特に「むね肉」や「ささみ」は脂肪が少なく、カロリーを抑えたい時にもおすすめ。ビタミンB群が豊富で、エネルギー代謝を助け、疲労回復をサポートします。また、カリウムやリンといったミネラルも含まれ、体の水分バランスや骨の健康を保ちます。抗酸化作用を持つカルノシン・アンセリンといった成分も含まれており、細胞の酸化ストレスを防いでくれます。シュウ酸はほとんど含まれていないため、腎臓への負担も少なく安心して使える食材です。
主な栄養素（特徴）
・たんぱく質：筋肉・皮膚・被毛の健康を維持
・ビタミンB群（B3・B6など）：代謝を助け、疲労を回復
・カリウム・リン：体内の水分調整・骨や歯の形成に関与
・カルノシン・アンセリン：強力な抗酸化作用で細胞を守る
・シュウ酸：ほとんど含まれず、腎への負担が少ない
加熱した鶏肉は安全に与えられます。中医学の効能と栄養学の知見、両方の視点から見ても、鶏肉は愛犬の健康を芯から支える理想的な食材といえるでしょう。
特に、体が冷えやすい、お腹が弱い、体力が落ちている愛犬には、鶏肉の持つ温めて補う力が大きな助けになってくれます。日常の食事に取り入れて、愛犬の元気を内側から育ててあげてくださいね。
